今回は、付加価値をつけた営業スタイルについてのご質問にお応えします。
びびび。 さんからのご質問
楽太郎様、初めまして。
びびび。と申します。
ぱっとしないサラリーマンをやっております。
20年ほど昔の事ですが、ふと気になった事がありますので、質問させて頂きたく連絡させてもらいました。
よろしくお願いします。
私が当時出入りしていた●の■(注:エリア名と駅名)に、ホッパーから金メダルが払い出されたら、同じ経営母体らしいキャバクラの割引になったり、好きな台を選んで設定6で1日打てるチケットが貰えるという店がありました。
私は実際に出した事が無いので、くわしい事はわからないのですが、こういう面白い企画もいまはもう見掛けないわけですがこういうのは何かの法律に違反するのでなくなったのですか?それとも業界の自主規制かなにかでしょうか。
もしこういう事についてお書きになった記事がすでにあり、見逃していただけでしたら済みません。
質問は以上となります。
お忙しい方だと思いますので回答を急いではいません。
(ご回答いただくのはメールでも記事でもどちらでも構いません。)
どうぞよろしくお願いします。
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ここまでが、びびび。 さんからのご質問です。
それでは回答です。
回答
景品交換上の法令違反について
パチンコスロットは、遊技の結果得た玉/メダルが景品に換わる遊びな訳ですが、交換取得する景品として提供して良いのは、物品(「有体物」と解釈)に限られるという規則があります。
また、各都道府県の条例によって、善良な風俗環境の維持や青少年の健全な育成という観点で不可とみなされたり、ホール側で自主的/慣例的に取り扱わない事が多い景品もあります。
なので、
- デジタルコンテンツ(web上での所定のシステム利用/ダウンロード/ポイント付加/アクセス権などの提供)
- 役務(サービス)
- 何らかの権利
- 現金または有価証券(財産的価値がある金券などの事であり、金地金は含まれない)
- [慣例上]その他、市場価値の算定が困難なもの(著名人のサイン色紙など)、風俗営業上好ましくないと解釈されるような物品(エログロ関連のグッズなど)
こういったものは、ホールでは扱っていません。
今回の件は…
前段でお話しした事について、具体的に例を挙げますと、
- パチ屋でしか手に入らない!深田恭子が優しく起こしてくれる特別音声入りの限定目覚ましアプリ
- AAAの宇野美彩子が弾ける笑顔で目の前で踊って元気づけてくれるサービス
- 日時を指定して北川景子から真顔で往復ビンタして貰える権利
- イベント来店中のセクシー女優が、脱ぎたての下着にサインをしてキスマークまで付けてくれたものを限定景品として提供!
こういったものは不可となります。
今回のご質問の、
- 同じ経営母体らしいキャバクラの割引
- 好きな台を選んで設定6で1日打てるというチケット
これらについては、金券とも言えますし、権利とも言える訳ですが、風俗営業の観点上や著しく射幸心をそそる事のないようにという観点からも、いずれにしても法令違反とみなされる可能性は極めて高いと言えます。
それがゆえに、昔であれば「やっちゃえ!」的に実施していた事でも、今では遊技産業健全化推進機構に代表される健全化組織や、取り締まり行政側のチェック目線が厳しいものになっている時代な訳ですから、もうそんな営業はリスクが高いという判断で次第に姿を消していったという経緯です。
ちなみに、小難しい事、法令の解釈については私がどうこうお話しするよりも法曹の方の解説に頼った方が良いでしょう。
たまたまですが、別件のご質問にお応えするために、手持ちの資料に目を通しておりましたら、今回の「ホッパーから金メダルが出て来たら…」というのと似たようなお話が記載されていましたので、参考までに紹介させて頂きます。
資料
『注解風営法Ⅰ』
蔭山 信 著
東京法令出版(2008年)
解説
上記資料の2つめの画像にある(八)で、遊技にあたって払い出されるメダルは沢山ある訳ですが、その中で特定のメダルを色付けするなどして差別化し交換価値を変える事は違反行為と解釈される、という主旨の事が記載されています。
これは、私が述べて来たのとはまた別の観点で、金メダルが出て来たらそれが特別な何かに換わるという営業手法は、不可であると判断していると言えるかと思います。
業界史を振り返りますと、1994年(平成6年)から2006年(平成18年)に掛けて、全国のスロット設置台数が70万台水準から200万台水準まで急増して、ホール軒数も18,000~16,000軒という高水準にあった訳ですが、その中には今とは比べものにならないくらいの「ヤバい」「ヤンチャな」お店も沢山含まれていました。
これは引退した釘の師匠からの伝聞なのですが、ホール経営者は、旧来的にはパチンコが主役でスロットは脇役という認識であったのが、スロットの3号機時代から爆裂4号機時代にかけて、「これは、儲かる!」という事が分かり、そちらのコーナーにも力を入れるお店が一気に増えたとの事でした。
これはスロット専門店の新規出店という形でも現れており、全国各地に、一種独特の雰囲気に包まれた小規模スロ専が乱立し、その中には今回びびび。 さんからお寄せ頂いたような、付加価値を提供して集客に結びつけようとする営業スタイルのお店も含まれていました。
まとめ
読者の皆さんの中にも、当時贔屓にしていた、変わった営業スタイルのお店があるかと思いますが、そのスタイルを構成していた要素は、今のスロットシーンを参照してみれば大体は風適法/諸規制違反であるというのが悲しいところです。
私がよく出入りしていたスロ専も、設定6の台番指定券が貰えたり、当日設定変更してくれるイベントがあったりと、色々と楽しませてくれたのですが、今そんな事をすればSNS等で一気に拡散して取り締まり行政や健全化組織の立入対象となり、行政処分のリスクが格段に高いというのは改めて申し上げるまでもありません。
また、これは私見ですが、本当の意味での「ヤンチャ」というのは法令違反をする事や、解釈のギリギリを攻める事ではありません。
普通に考えればこう、という流れ、例えば「大型連休中は回収営業だろう」、「台風の日は売上が伸びない中で粗利を維持しようと考えるから、まともな設定は無いだろう」、こういった「業界の当たり前/セオリー」みたいなものの逆を行ったり、敢えて異なる営業手法をとっているお店を指して「ヤンチャ」と呼ぶべきであると思っております。
更に言えば、毎度物議を醸すような事をするライターさん/演者さんの力を借りて営業するのは、果たしてどういう事なのか?
これについても、色々と考えさせられるような状況にあります。
それは、まともでも、ヤンチャでもない、招致する側であるホールのモラルがただ単に疑われるだけの馬鹿な行為としか言えないからです。
自身の攻撃的且つ支離滅裂な言動が活字や動画になって、不特定多数の方が視聴したり来店客数が増える事で「承認された」と錯覚し、それによって利益を得る事に快感を覚えている変態的で人格が破綻したようなライターさん/演者さんに、来店をオファーしている訳ですから。
私の立場では、これ以上お話しすると方々で角が立ちますので、そんな感じに色々と思う時がありますとだけ申し上げて、締めたいと思います。
今回は、これくらいにしておこうかと思います。
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「法令違反が当たり前の時代…アカンのだが、それはそれで面白い時代だった」、と思う方は、そっと押して下さい。
[記事公開]
2018年5月4日
Pingback: スロットで金メダルが出たら特典があるような営業はなぜ見掛けなくなったのですか?-回答 | パチパチスロスロあんてな
「特殊景品」、しかもゴールドやペン先とかじゃない、例えば謎のコインカードを、どう日常の生活の用に供するんだろうというツッコミはさておき、
人様の欲望には上限がありませんからね~。ヤンチャなサービス合戦の先に何があるかは分かりませんし、どこかで抑えなきゃならんのは、仕方無いとは思います。
・・・その頃を体験してみたい、という気持ちはありますが(´・ω・)
丁寧なお返事感謝いたします。
やっぱり違反なのですね…面白い営業だとは思うのですが。時代が変わったというやつでしょうね。
ありがとうございました!