【寄稿】宇佐美典也氏の新著『パチンコ利権』書評

今回は、このブログの、古参の読者の方から寄稿して頂きました。

 

『パチンコ利権』著:宇佐美典也氏

 

こちらの著書に対する、読者の方からの書評は、下記の通りです。

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寄稿

宇佐美典也氏の書いた『パチンコ利権』をさっそく読みました。

 

まず同書の内容を簡単に紹介します。

 

序章で、著者が大学生だった2002年のAT機・ST機の時代からパチンコ・パチスロユーザーであったことが明かされます。

 

本書の「おわりに」も、「パチンコ、ありがとう。」という一文で締められています。

 

著者は何度も、ぱちんこ業界の現状について「寂しい」とつぶやきます。

 

問題点の指摘や批判をしているだけでなく、著者のぱちんこ業界に対する「哀惜の念」が伝わってくる内容となっています。

 

1章で三店方式と、ぱちんこ業界と警察の特別な関係について、2章で「在日朝鮮人」とパチンコ業界の密接な関りと送金の問題について、3章で高井崇志議員による国会での質問から、IR推進法が上程されギャンブル等依存症対策基本法が成立するまでの政治的な動きについて、4章でパチスロ4号機からパチンコMAX機までの遊技機の変化について、述べられています。

 

3章と4章の間に、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子氏との、また4章の後にAV女優でホール営業を数多くこなす紗倉まな氏との対談を挟みます。

 

3章の終わりでは、高井議員による国会質問は、「あの質問は私とギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表で素案を作り、その後、高井議員と私でさらにブラッシュアップして作り上げたもの」(p.130)であったことが明かされています。

 

最終章の5章で、ぱちんこ産業に凋落をもたらした要因として、携帯ゲーム、ギャンブル依存症、警察との「癒着」を指摘します。

 

その上で業界再生に向け、業界と警察との関係の解消とパチンコ税の導入を提言しています。

 

私は、いわゆる「ギャンブル(等)依存症」というトピックは、ぱちんこを含むギャンブリング産業、行政と民間の社会福祉領域、精神科医療、GA(ギャンブラーズ・アノニマス)に代表される自助グループの活動の接点に位置付けられ、またそれぞれの領域に足場を置きつつ、他領域との相互作用のなかで考えられるべきものであると考えています。

 

本書は著者、そして行動を共にしてきた田中氏から見た、ぱちんこ業界に対する理解と、「ギャンブル依存症」を「政治化」していった過程が語られます。

 

そこに私は「議論が個人的な視点と経験にとどまっている」という本書の限界があると思うわけですが、議論は今後、それぞれの立場から深化させていくべきものなのでしょう。

 

私は本書を読みながら、宇佐美氏と田中氏の活動がどうして、ぱちんこ業界に対して、そして「ギャンブル(等)依存症」問題に対して、大きなインパクトを持つことができたのだろうかと考えていました。

 

その理由のひとつには、高井議員をはじめとする国会議員や各界へのロビー活動を行って、ぱちんこ業界と「ギャンブル(等)依存症」問題を「政治化」させることに成功した、ということを挙げることができるのではないかと思います。

 

田中氏が業界団体に対して活動資金の援助をお願いに行った際、「何故か最初から喧嘩腰でしたし、様々な所から聞いた話によると『金目当て』とか、ここでは書けないようなひどい侮蔑の言葉がありました」(p.127)ということです。

 

この経験がいわば「原動力」、あるいは活動にエネルギーを与える「薪」となって、田中氏は宇佐美氏の助力を得て、活動を急速に「政治化」させることになりました。

 

「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立して以降、ターンは「政治化」から「政策化」へと移っていますが、ロビー活動において宇佐美氏と田中氏たちの活動は、無視し得ない政治的勢力となっています。

 

宇佐美氏と田中氏の活動が、ぱちんこ業界と「ギャンブル(等)依存症」問題に対してインパクトを持つことができたもうひとつの理由は、田中氏のギャンブル依存症問題を考える会(以下、考える会)の活動が、これまでの当事者活動/自助グループの活動とは性質を異にしていたということを挙げることができると思います。

 

本書には「田中さんは自身がギャンブル依存症・買い物依存症からの回復者でもあり、その経験を生かして、日本に『12ステップ』と呼ばれる依存症からの回復手法を広めた先駆者となった」(p.121)という記述がありますが、これは歴史的には正確ではありません。

 

日本において最初のGAのミーティングが開催されたのは1989年2月であったとされています(http://www.gajapan.jp/jicsp-gajphistory.html)。

 

それ以前にも、1978年に設立された三ノ輪MACなどの活動もありました。

 

では、田中氏たちの考える会の活動はどのような点で「新しい」と言えるのでしょうか。

 

まず、12ステップグループの活動では原則として、活動資金を外に求めません。

 

例えばGAでは、「一致のためのプログラム」の7項目で「すべてのGAグループは、外部からの寄付を辞退して、完全に自立すべきである」と定めています。

 

「自助(セルフヘルプ)」を徹底しているわけです。

 

また、12ステップグループが、アルコールであればアルコールの製造者に、ギャンブリングであればその事業者に、抗議を行い、政治的なロビー活動に踏み切ったという話も、寡聞にして聞いたことがありません。

 

考える会の活動は、その活動の実態から見れば、消費者活動と多くの共通項を持っています。

 

消費者活動では、消費者の団体が商品で被害を受けたとして製造者に損害請求や補償の請求を行い、監督官庁には規制の強化を求め、監督責任が行き届いていない責任を追及します。

 

宇佐美氏は本書の中で何度も、ぱちんこ業界は「密室でごく一部の政治家と役人と業界団体がすべてを決める」(p.104)と批判しています。

 

ですが、もしそのような「前近代的」な慣行をぱちんこ業界が維持することが可能であったならば、「ギャンブル(等)依存症」問題の「政治化」も、考える会の影響力の伸長も、起こり得なかったのかもしれません。

 

ぱちんこ業界が状況の変化についていくことができず、打つ手が後手に回ってしまった結果として、今のこの状況はあるのだと思います。

 

本書は、その変化を同時代的に記録しています。

________

寄稿して頂いた書評は、上記の通りです。

 

 

以上、今回は、これくらいにしておこうかと思います。

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2019年3月6日公開

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