今回は、寄稿して頂きました。
寄稿者紹介
ひら・ たいら氏
<プロフィール>
長年にわたり、ぱちんこ業界に携わっている業界人。
特に、ぱちんこ業界における依存問題対策、ギャンブリング障害、IR関連の動き等においては専門的な知見を持つ、楽太郎にとっての重要な情報提供者の一人。
寄稿
『マンスリー・レポート「IRにまつわる動向」2020年2月【第5回】』
新型コロナの影響
3月初旬現在、国内外での「新型コロナウイルス感染症」感染拡大に、歯止めがかかりません。
2月期におけるIR(統合型リゾート)にまつわる動向をまとめる本稿を、「新型コロナ」の拡大がIRに及ぼす影響について、3つのカテゴリーに大別して整理することから始めましょう。
まず、中央政府と地方自治体で進行中のIRに関する政治に対する影響です。
開催中の国会では、「新型コロナ」対策が討議の中心となりました。
国のIR基本方針の策定と公表は3月から4月中が予定されていましたが、「新型コロナ」の終息を見込むことのできない状況がつづけば、IRに関する政策はさらに後回しにされていくと思われます。
また、国の「新型コロナ」への対応に対する批判が、現政権への批判になりつつあります。
安倍政権への批判がエスカレートし、政権交代が実現すれば、安倍政権によって強力に推進されてきた日本におけるIR政策は頓挫する可能性があります。
国の政策がまとまらなければ、それを受けて制定されていく地方自治体のIR政策も停滞することになります。
地方自治体のIR政策については次節でまとめます。
「新型コロナ」がIRに及ぼす影響の2つ目は、世界のカジノ産業に経済的・社会的に及ぼすものです。
世界最大規模のカジノ市場であるマカオのIR・カジノは、2月5日からの休業を実施し19日まで継続しました。
マカオのカジノにおいて最大の顧客クラスターは中国人となっていることもあって、顧客が戻ってくる時期への見通しは立っていません。
カジノ事業者の売り上げの落ち込みが深刻度を増すにつれて、日本への進出意欲が減退し、あるいは投資金額が縮小することも予想されます。
また、「カジノが儲からない」という認識が日本国内で浸透・共有されることになれば、政策化の優先度がさらに大きく低下していくこともあり得ます。
3つ目として、観光産業に及ぼす影響があります。
日本においてはIRの政策化にあたって、「カジノの床面積はIR施設全体の3%を上限とする」、すなわち「IR即カジノ」ではないことが強調されました。
IR政策は、2000年代に敷かれた「観光立国」政策の中に位置づけられているのです。
「新型コロナ」は世界の観光産業に大きな打撃を与え、日本の「観光立国」政策を重視する姿勢が揺らいでいく可能性があります。
地方自治体の進捗
2月中に国のIR政策に進捗はほとんど見られませんでしたが、すでにIR誘致を表明した自治体では、実現に向けた工程がすすめられています。
すでにIR誘致を表明した自治体は、大阪府・大阪市(以下、大阪)、横浜市、和歌山県、長崎県です。
政策化で先行する大阪では2月14日、IRのRFP(事業者の公募選定)が締め切られました。
大阪は即日、RFPへの応募はMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの1グループのみであったと公表しました。
このことによって、大阪と事業者の関係性は、事業者が大阪からの認定を争う、つまり選定者である大阪側が優位な「コンペ」形式ではなく、一対一で条件を決めていく「交渉」の、ほぼ対等に近い関係となることが決定しました。
各誘致自治体は、IRの実施方針の策定をすすめています。
和歌山県は2月20日、「和歌山県特定複合観光施設設置運営事業実施方針(案)」を公表しました。
自治体の実施方針についてはこれまでに、大阪と長崎県も素案を公表しており、残る横浜市も3月5日に公表しました。
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「IR汚職」によるIRに対する社会的イメージの悪化、そして前節で述べた「新型コロナ」の影響により、IRに対する政治的、社会的関心は低下しています。
苫小牧市内を誘致地の第一候補としていた北海道は、IRの誘致を実質的に断念しました。
すでに誘致を表明している自治体以外に、このタイミングで新たにIR誘致の表明に踏み出す自治体が現れるとは考えにくい状況にあります。
公営競技の動向
「新型コロナ」の感染拡大によって一段と、自宅に居ながらにして参加することのできるインターネット・ギャンブリングに対して、ギャンブリング/ゲーミングに関連する各界から注目が集まっています。
日本では、中央競馬・地方競馬、モーターボート、競輪、オートレースの公営競技が、無観客での競技の実施に踏み切りました。
無観客競技では、インターネット・電話でのみ、投票することができます。
「新型コロナ」による無観客化の影響は、インターネット投票の浸透度によって異なるようです。
比較的に先行してインターネットによる投票が浸透していた中央競馬では、インターネット投票の売上が大きく伸びて売上全体の落ち込みを一定程度カバーしました。
その一方でインターネット投票の浸透が遅れている競輪では特に、売上の落ち込みが深刻です。
「新型コロナ」とは直接関係がありませんが、公営競技では玉野競輪場の新たな動きが注目されました。
岡山県の玉野市が運営する玉野競輪場では建て替え事業が計画されており、チャリ・ロトらが落札した新たな事業では全国で初めてホテルを併設することが計画されています。
ホテルと公営競技場という組み合わせは、ホテルとカジノを主要な構成要素とするIR(統合型リゾート)を想起させます。
カジノを中心としたIR構想が頓挫した日本各地にIR型の公営競技場が誕生するという未来予想図も、あながち絵空事と否定できないようになってきました(玉野競輪場の再整備計画については、木曽崇氏がご自身のブログでコメントしています)。
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寄稿文は、上記の通りです。
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[記事情報]
2020年3月8日公開
Pingback: ①コロナ禍の拡大②大阪のIRスケジュール遅延と横浜・和歌山の動向③視界不良となった日本版IRの未来【IRにまつわる動向:3月版】 | パチンコ店長楽太郎の秘密基地