今回は、寄稿して頂きました。
Contents
寄稿者紹介
ひら・ たいら氏
<プロフィール>
長年にわたり、ぱちんこ業界に携わっている業界人。
特に、ぱちんこ業界における依存問題対策、ギャンブリング障害、IR関連の動き等においては専門的な知見を持つ、楽太郎にとっての重要な情報提供者の一人。
寄稿
『マンスリー・レポート「IRにまつわる動向」2019年11月』
「カジノを含む統合型リゾート」(IR、政策用語としては「特定複合観光施設区域」)を日本につくるための政治動向に関するマンスリー・レポート(月次報告)の2回目です。
今回は、2019年11月期となります。
11月期にも国と地方の両方で、さまざまな動きがありました。
まず制度の整備を進める国政についてまとめ、地方では開業を急ぐ大阪(大阪府・大阪市)と、知事の判断が注目されていた北海道について述べて、最後に横浜市と東京都の動きについても触れておきたいと思います。
IR申請期間が決定、おおよそのスケジュール固まる
政府は11月19日、地方自治体によるIR認定申請の期間を「令和3年(2021年)1月4日から同年7月30日まで」とすることを公表しました。
この公表は、すでに公表されていた「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」についてのパブリックコメント(パブコメ)に関して、申請期間についても追加してパブコメを募集するという形で行われました。
[参考]「国土交通省 観光庁HP」当該パブコメ実施の詳細について(リンクします)
申請期間が定められたことにより、IR整備の全体的なスケジュールが固まりました。
申請期間までに、IR実現を目指す自治体は、まずは基本方針に準拠して実施方針を策定し、事業者を公募選定し、選定した事業者と整備計画を策定し、議会の承認を経て、できあがった整備計画をこの申請期間中に国へ提出することになります。
IR施設の工事着工は、2021年後半以降となる国による選定の結果が発表されてからとなるでしょうから、開業時期や工期も見えてきます。
この申請期間の設定について、国際カジノ研究所の木曽崇氏は、横浜市と東京都にとってはプラス、大阪と千葉市にとってはマイナスに作用するのではないかと分析しています。
[参考]Yahoo!ニュース 2019年11月19日up
『カジノ申請期間は2021年7月30日まで』(リンクします)
国会ではIRの整備に向けて、カジノ管理委員会の委員長ら国会同意人事案が11月29日の本会議で採決されました。
これで予定されていたとおり、カジノ管理委員会が来年1月7日に設置されることが、ほぼ確実となりました。
大阪が実施方針(案)を公表
大阪は、大阪・関西万博が2025年に開催されることから、IRの開業時期を万博開催前の2024年度中に設定し、その実現を目指していました。
前段で述べたとおり、国はIRの申請時期を2021年7月末までとしたことから、2024年度中に開催するために確保できる工期は3年未満となってしまう公算が高くなっています。
ですが大阪は官民を挙げて、工事の前倒しやIRの部分開業も視野に入れ、できる作業を急いでいます。
大阪府と大阪市は11月21日、「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備 実施方針(案)」を公表しました。
国の「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」は現在、パブリックコメントを受け付けている段階であり、その国会での採決は来年に入ってからとなる予定です。
大阪は、国の「基本方針」の国会採決を待たずに「実施方針(案)」を策定し公表したということになり、「実施方針(案)」の公表はIRに手を挙げている自治体では初めてです。
大阪府・市の報道資料によれば、来年6月頃に事業者を選定、再来年の2021年秋頃には事業予定地を事業者に引き渡して工事に取り掛かりたい考えです。
大阪のIRの開業時期が2024年の万博に間に合うのかどうかは、万博の集客に影響すると考えられることもあって、注目されています。
[参考]「大阪市HP」
「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域整備 実施方針(案)」の公表について(リンクします)
北海道はIRを断念
IRの候補地のなかで北海道苫小牧市は、「地方型」のIRの最有力候補地のひとつでした。
北海道の鈴木直道知事は11月29日、道議会において北海道へのIR誘致を断念すると表明しました。
「区域認定までの限られた期間で環境への適切な配慮を行うことは不可能だと判断した」ためです。
苫小牧市郊外のIR候補地では、希少な猛きん類や植物が確認されており、環境アセスメントにかなりの時間がかかるという指摘がなされていました。
すでに誘致を表明した自治体による誘致断念の表明は、北海道が初めてです。
国が3カ所選定するIRのうち、少なくとも1カ所は、「大都市型」ではなく「地方型」となるのではないか、という見方があります。
この「地方型」の枠に、どこが選ばれることになるのでしょうか。
北海道の脱落により、「地方型」IRの誘致レースの行方が不透明感を増しています。
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横浜と東京で見られた動き
8月22日の林文子市長による誘致表明以降、大阪に次ぐスピード感で誘致に向けた手続きを進めているのが横浜市です。
横浜市は10月16日、「IR区域の整備を実施する意思を有する民間事業者」からのコンセプト提案(Request for Concept、RFC)の募集を開始しました。
11月7日に開催された「第1回[横浜]統合型リゾート産業展」にはラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツ、ギャラクシーエンターテインメント、メルコリゾーツ&エンターテインメント、ゲンティン・シンガポール、セガサミーの6事業者が出展し、この6者が横浜市のRFCに応じたようです。
横浜市はRFCの内容を参考にして、来年春には実施方針を公表し、2020年中に事業者を選考すると見られています。
「大都市型」IRの候補地として、大阪、横浜市と並んで動向が注目されるのが、東京都です。
東京都庁内に設置された「東京ベイエリアビジョン(仮称)庁内検討委員会」へ提案を行うことを目的に結成された「東京ベイエリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」は10月中にその提案をまとめ、試案として公表しました。
このなかでは、青海エリアにIR施設を整備するとなっています(p.15)。
[参考]『「東京ベイエリアビジョン」(仮称)の検討に係る官民連携チームの提案』より(PDF資料にリンクします)
東京都は、来年1月20日から2月14日の期間に民間企業からのヒアリング調査を実施し、東京オリンピック・パラリンピック後に「東京ベイエリアビジョン(仮称)」をまとめる予定としています。
ここに、官民連携チームの試案と同様に、IRの整備を明記するのかどうか、その動向が注視されます。
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寄稿文は、上記の通りです。
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[記事情報]
2019年12月6日公開
結果ありきの出来レースな気がする(なんとなく