今回は、役物抽選機の事についてのご質問にお応えします。
亮 さんからのご質問
いつもツイッターとブログを拝見しております
楽しく有用な記事、ありがとうございます。
トキオスペシャルはよく打った(過去形)ので、釘画像みてみたいですが、都合が悪いようで残念です;^^
ところで質問なんですが、トキオスペシャルって役物の部分で店が調整可能な機構などは存在するんでしょうか?
体感になりますが、球の挙動(タワー抜け率やイレギュラー率)が微妙に変わる印象が残って、気になったりします
他の羽根物でもそんな気がしたりすることもよくあったんですが、 ネットをあさっても、確たる情報がみつからずいつも困惑するのみです
台の寝かせ?で変わるという話は聞きますが、基本的には簡単には変えられないとも聞きます
簡単に寝かせ調整できる部材も存在するともどこかで見ましたが、そのようなものは一般的に使われているものなんでしょうか?
差し支えなければ、ブログでそのあたり解説いただけるとありがたいです
よろしくお願いします
ブログについて一悶着あったようですが、存続するとのことで喜ぶ一読者より
乱文にて失礼しました
________
ここまでが、亮 さんからのご質問です。
(全文そのままです)
それでは回答です。
回答
役物抽選機について
まず、羽根物に代表される役物抽選機において、玉を羽根が拾ったり飛び込んだ後の、大当たり抽選(V入賞)に関わるステージ構造部分を、店側で角度調整するなどして入賞率に変化を出す事は可能か、というご質問にお応えします。
これは、箇条書き的に結論から申し上げれば、
①メーカー側は、ステージ構造部分や可動体(回転体やアームなど、SPルート振り分けやV入賞に直接関わる構造物)を、店側が調整可能なようには製造/販売していない(現行でそのような機種はない)
②もしもステージ構造部分を可変な造りにした場合には、その可変幅によって遊技数値が変わって来るため、型式試験において全ての可変幅で実射試験を受ける必要があると思われる
③20年以上前には、ステージ構造部分を店側が意図して調整する場合があったが、今はそのような事をしているお店は見掛けないし聞かない
こんな感じになります。
解説
①については、続く②が解説になります。
やってできない事は無いのでしょうが、現行機においては事例がありません。
何故無いのか、というより突っ込んだ事情については、メーカー側の方でない限りは回答が難しいと言えます。
次に、③については、私と同世代かそれ以上のキャリアがある役職者しか知らないような「悪しき技術」として存在しましたが、今ではそのような行為に及ぶお店はまずないと思われます。
その理由は、遊技機流通制度がしっかりしたものになったり、遊技産業健全化推進機構や各エリアの健全化組織による立入検査が普及した事、またそこまでして遊技機を長期運用したり、釘調整技術や「悪しき技術」による調整で自店の遊技客の相手をするのではなく、話題性がある新機種の目まぐるしい入替やイベントの実施といった別の要素で集客したり稼動を維持しようとするスタイルに業界全体が変わっていった事が挙げられます。
この「悪しき技術」とは、ステージ構造部分を取り外して、再設置する際に紙類を挟み込んだりするなどして角度調整するものです。
また、より直接的に、可動体をガタつかせたり正規の位置からズラしたりする事で玉の動きに干渉しようとする場合もありました。
更には、ステージの玉の動きがイレギュラーなものになるように、ステージ表面をロウソクでなぞって微妙な凹凸を作ったり、といった事例も聞きました。
しかし、どの「悪しき技術」に関しても、今では全くその話を聞きません。
遊技台の設置の仕方と傾斜値の計測について
遊技台は概ね垂直から1度の範囲で島に固定され、それは一般的な表現ですと3分5厘とか4分とか、そういった言い方で表します。
メーカーが遊技台の販売にあたり合わせて発行する事が義務付けられている取扱説明書には、「遊技機の設置条件=裏面側に、1度以内の傾きとなるように設置」するようにという主旨の記載が必ずあります。
傾斜の変更時には、
- 3分から4分5厘に「寝かせる」
- 4分5厘から3分に「起こす」「立てる」
などと表現します。
遊技台を島に固定する際には、島の木造部分に釘で打ち込んで完全に手作業で設置し傾斜変更する際には再度釘で打ち込み直すのか、それとも角度調整がツマミ等で可能なアタッチメントが事前に付けられているところに設置するのか、という違いがあります。
どのような設置の仕方をしても若干なりとも手作業が関わったり、計測するにしても木枠のところで計るか、遊技盤面に計測器を当てるかそれともガラス面に当てるかによって微差が発生します。
また、設置期間が長くなると、遊技台自体の重みや遊技/スタッフ作業などにより衝撃が加わる事でも、傾斜は少なからず変化して行きます。
例えば、近年の遊技台は液晶ユニットや基板、ギミックが取り付けられている顔の部分(ドア開放して手前に動く部分)が相当に重いので、ドア開放の頻度が多ければ多いほど、傾斜が変わってしまう可能性もまた高まると言えます。
店側が意図する傾斜と実際の傾斜とで、最もズレが生じるパターンは、釘での完全手作業での打ち込み固定且つ木枠部分で計測するやり方です。
反対に、最も正確なのは、島の木造部分に金属製のアタッチメントを付けておいて(そういった製品があります)、フック状のもので固定したりする仕組みを導入していて、且つガラス面で計測するやり方ですが、ガラス面が前面にせり出している機種があったりするので通用しない場面もあります。
また、傾斜が遊技に与える影響を突き詰めて考えた時に、実際に玉が走るのは遊技盤面上だという事から、盤面に傾斜機を当てて図るのが理想的と言えます。
しかし、近年の盤面の特徴として挙げられる、立体的な構造が邪魔をして、傾斜機をしっかりと当てて正確に計測するのが困難な場合もあります。
要は、設置の仕方や、計測の仕方、これらはいくつかパターンがあり、それぞれについて良い面/悪い面、容易に出来る/面倒、安価/導入コストがかかる、といった事情があるという事です。
ご質問の中に、
簡単に寝かせ調整できる部材も存在するともどこかで見ましたが、そのようなものは一般的に使われているものなんでしょうか?
というものがありました。
これに対しては、
・そういうアタッチメントというか可変機器もいくつか存在していて導入店舗も多いが、実数を提示するだけのデータは手元にない
・可変機器を導入しない理由は、導入コストを考えた際に及び腰になるから、或いは設置や傾斜値変更時の作業を効率化しなければならないほどの営業規模ではないお店も多いから
このように回答させて頂きます。
傾斜と玉の流れ、釘調整の関係性
島に設置された遊技台において、打ち手目線では角度が付いた出幅(長さ)がどの程度かによって、寝ているのか、起こして設置されているのか、という違いがある程度は判別できます。
※角度が付いた出幅(長さ)=後方に寝ている、という事を示します。
遊技台の上部が前方に出っ張って来て、傾いている、という設置の仕方はあり得ません。
理論上は、1分の違いによって約3mmの出幅(長さ)の差が生じる事になるので、余程設置作業が下手で、同じ機種なのに状態がまるで違う…というようなお店でもない限りは、この機種(台)は寝かせ気味だな、これは立てて/起こしているな、といった程度であれば慣れれば見て分かります。
伝統的には4分~4分5厘の範囲で設置するお店が多かったと思いますが、いつ頃からと定義するのは難しいですが近年では3分~3分5厘(微調整可能な場合は3.75=3分7厘5毛などもあり得る)での設置店舗も増えていると思っております。
実際、営業マンから天龍などの機種の他社営業データを提供して貰った際などには、4.25、3.25といった微調整のデータも、結構見かけるようになっています。
ちなみに、先程説明した出幅(長さ)の事で具体例を挙げれば、3分での設置であれば、その出幅は約9mmという事になります。
また、一般的な設置傾斜が、4分台から3分台に変わって行った理由として考えられるのが、遊技機の構造/ゲージの変化です。
20年前の遊技機と現行機を比べてみると、液晶画面のサイズupが原因で始動口が遊技盤面のより下部に位置するようになり、画面の横幅分だけステージも幅広になっている都合上、設置傾斜がより寝ていると、ステージ滞在時間や入賞率が上がる場合があり、これを抑制するために立て気味で設置するお店が増えた、といった感じかと思います。
また、立てて設置する事で発射玉の落下に勢いが付き易くなり、その結果として釘に絡みにくく、ガラスにぶつかったりする事も含めて暴れ玉になりやすいので、マイナス調整した場合に打ち手側に不利なようにスランプが生じやすくもなる場合が多いかと思います。
例えば、寄り釘の釘頭を叩いて間隔を拡げた場合(=マイナス調整)、しっかり寝ていればそこまで間隔が拡がっていない根元付近を玉が走りやすいので、見た目ほどは意外にこぼれないという事がある一方で、立ててしまえば打ち手側(ガラス側)を玉が走りますので拡がった釘間隔の影響を受け零れやすくなる、という感じです。
ただし、ステージがしっかり機能するかどうか、寄りが零れやすいか否か、といった事は、ゲージや、ステージと道連釘との間のガード板の有無など色んなものの影響を受ける事ですから、一概にこうだ、とは申し上げられないのがパチンコ遊技機の面白いところであり難しいところでもあります。
それがゆえに、伝統芸能的な技術としての釘調整は奥深いものであり、一般の方はもちろん遊技に精通した打ち手であっても、スロットの解析は出来たとしてもパチンコの詳細解説は困難である、という理由でもあります。
特に、今回のご質問の主旨である羽根物については、設置傾斜が寝ていて、遊技盤面上を走る玉がまともな調整の釘に絡みやすくなり良く拾われる、でも、スペシャルルートの有効率が下がる事でV入賞率がそんなには上がらなかった、という残念なパターンもあったりします。
また、同じ役物抽選機でクルーン搭載タイプの場合には、玉の流れという観点では寝ていた方が良くても、飛び込んだ後、クルーンの有効穴が奥にあるのか手前にあるのかによって、打ち手にとって有利かどうか変わって来るため、これも一概にこうだとは申し上げられません。
まとめ
色々とお話しして参りましたが、ぱちんこ業界にひとつ良いところがあるとすれば、独自に考察する者を否定するような事は無い、という点です。
以前、
「いちユーザーに過ぎないのに、業界メディアや業界人ブログから業界事情をコピペしたものに寸評を加えた程度で解説した気になったり、釘を叩いた事もなければ調整数値の違いを検証した事もないのに、ブログで釘調整云々の事を解説したりする個人ブログ運営者の事をどう思うか?」
といった主旨のお問い合わせを頂いた事があります。
それに対しては、
「そういう考察や独自の解釈、遊技にあたっての工夫の余地があるからパチンコスロットは面白い」
「余程的外れなものや、誤解を生んだり他者の利益を損なうようなものでなければ、誰が何を考えて実践しようが発信しようが、構わない」
「そのような、アプローチの雑多さこそが、パチンコスロットの魅力である」
このような内容で返信させて頂きました。
亮 さんにおかれましては、遊べるお店がそれほど多くない業況である事も関係して大変かとは思いますが、今後も色んな考察や工夫、技術介入でもってご遊技を楽しんで頂けるようにとお祈りして、締めさせて頂きます。
以上、ごく簡単にではありますが、役物抽選機の構造および設置傾斜に関するあれこれについて、お話しして参りました。
今回は、これくらいにしておこうかと思います。
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[記事公開]
2018年5月28日
平和のサーカスは店側でクルーンの角度を変更可能。ニューギンのベータはワッシャーを挟んで角度を変更可能。そんな時代もありました。
ほ~。以前させていただいた質問の回答そのままです。参考になります。
昔、初代バカボンはワープが奥に入る甘めの形で、寝かせが強いほど良く回ると言われていました。
ただし、ワープゾーンが潰されていたら意味ないし、寝かせが強いと通常ルートが釘の根っこに当たって入賞が辛くなったので、一長一短という意見もありました。
寝かせの見抜き方は、透過型の100円ライターを使って、オイルの角度を見るというやり方をしていました。簡易平準機ですね。
天龍やライジンマンみたいなクルーン式の一発台は寝かせで全く変わってしまうのですが、今回の記事を見る限り、メーカー側の想定割数も寝かせを考慮した上でのことのようですね。
Pingback: パチンコの羽根物などで、役物構造を店側で角度変更してV入賞率を変えるような事はありますか?-回答 | パチパチスロスロあんてな
とてもためになりました。
ありがとうございました!
これで「ごく簡単」な解説なのか、、、パチンコって奥深いものなんですね。
マイホの店長アホにしかみえないが、こうゆうこと考えながら調整してんのか。
パチンコ店長に対するイメージがかなり変わりました。